ピットについて
ヨーロッパ型のサーキットではピットに接して屋根付きのガレージを並べるのが普通であるが、北米ではガレージはピットと分離しており(註1)、従ってピット自体は露天である。現在の日本のサーキットは殆どがヨーロッパ式のピットを持つ(註2)が、仮設サーキットにヨーロッパ式ピットを作るのは大変である。北米式ピットで十分機能を果たせるのだから、「公道天国」ではピットの設備は北米式を前提としている。
では具体的なピットの設置場所の条件はといえば、
- まず第一には、ほぼ水平な場所であることである。しかし鈴鹿サーキットのピットなどはかなり傾斜しており、完全な水平である必要は無いようである。
- 第二には、最低1車線、できれば2車線分のピットレーンと、その脇に作業スペース、更にその脇に機材、人員の待機するスペースを割り当てられるだけの幅員が必要である。具体的には片道3車線(広ければ2車線でも良い)+広い歩道を備える道路等であればほぼ条件を満たすであろう。
- 第三には、競技車の台数分だけのスペースを確保できる長さである。「公道天国」では一台分のピットの長さを大体10mとして、一応20台分で200mを目安としている。
- 第四には、ホームストレートにほぼ隣接した場所であることが要求されるが、ピットとホームストレートが多少離れているコースの例(註3)もあり、必ずしもピットウォールを挟んでホームストレートとピットが並んでいなければならない訳でもないようである。
- 第五には、ピットに隣接してパドック/ガレージを設置できるような場所であることが望まれるが、現実には仮設サーキットの場合パドックとピットが離れている例もあり、必須条件ではない。
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ピットそのものを設置する場所に求められる条件は以上のようなものであるが、ピットの入口/出口の作り方にも、やはりそれなりのやり方が要求されるであろう。長いホームストレートを持つコースでは、ピットの入口/出口はホームストレートに沿って設けられるが、そうでない場合、入口は最終コーナーアウト側もしくは最終コーナーの手前イン側に、出口は1コーナーアウト側もしくは1コーナー直後のイン側に通常設けられる。その理由としては、コーナーのクリッピングポイントなどレコードライン近くにピット入口/出口を設けると、ピットイン/アウト時の速度の遅い車両とレーシングスピードで走る車両が同じラインを通ることになり危険である、という事であろう。
現実のサーキットには必ずしもこの原則が当て嵌まる訳ではないが、「公道天国」ではなるべく原則に従って、しかもその場所の元々の環境になるべく影響の少ないやりかたでコースをデザインした為、ピットロードがピット自体の要求する長さよりも相当長めになりがちである。
以上ピットの設置に関する様々な条件を並べてみたが、実際にはFIAスポーツ法典やそれに準ずるであろうJAFの規則でピットについてどのように規定されているのか筆者は知らない。またピットでは燃料などの危険物を扱う為、消防法上の制約もあるであろう。しかし上記の条件だけでも完璧に満たす場所はそうあるものではない。「公道天国」では(特に東京編では)細かい事には目をつむって、かなり無理な場所にピットを設定したりもしている。
特に細長いかたちのスペースが確保できない所では、広場状の場所にピットレーンを折り曲げてピットを収めようとした例(註4)などもある。またホームストレートを通るよりピットレーンを通るほうが一周の距離が極端に短くなってしまう例(註5)もある。このような場合レース中のピットインには最低所要時間を定めるなどの対策が必要だろう。
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註1.
F1GPが開催されるモントリオールのジル・ビルヌーヴ・サーキットは欧州式ピットを備えるのだが。
註2.
十数年前までの富士スピードウェイのピットは簡単な屋根こそあったものの基本スタイルは北米式であった(“スピードウェイ”なる名称もアメリカ志向を匂わせるが)。現在ももてぎのオーバル用ピットはもちろん純アメリカンスタイルである。
註3.
CARTのデトロイト・ベルアイル島のコース、あるいは所謂“Dシェイプ”のオーバルトラックなど。
註4.
東京編《B反市》の西荻窪A/B、名古屋編の愛知青少年公園(全て2000/09/13時点では未発表)など。
註5.
東京編《B反市》の国分寺A/B(2000/09/13時点では未発表)など。
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