全日本ツーリングカーの来し方行く末 2000/01/09

 「笹島スピードウェイ計画」のコメントでSSCCに対する期待を述べたが、正直なところ筆者の予測としては、SSCCは結局日の目を見ず、代わりに人気上昇著しいスーパー耐久シリーズが全日本ツーリングカー選手権に格上げされるのではないかと思っている。全日本GT選手権の人気沸騰ぶりにしても同様だが、純然たるレーシングカーよりも、もっとロードカーに近い車両によるレースが人気を呼ぶという傾向は、日本には「レースのファン」は少なくても「クルマ好き」は多いという事を物語っているのだろう。

 それ自体は別に悪いことではない。ただレースの人気が出走する車種の人気に大幅に依存しているという状況は、レースを運営する側からすれば難しい問題ではあろう。露骨に言えばスカイラインGT-Rの人気が、全日本GTとスーパー耐久の人気の基礎を作っている。グループAによる全日本ツーリングカー選手権を終わらせた後、スカイラインGT-Rを排除したことでツーリングカーの全日本選手権は人気を落とし、“2ドアセダン”であるスカイラインGT-Rを受け入れたことで、スポーツカーの全日本選手権は、ある面いびつな成功を得た。ではどうすれば双方丸く収まったのか。筆者の数年来の考えを述べる。

 全日本ツーリングカー選手権はBTCC(註1)等に合わせたクラス2ではなく、DTM(註2)とおなじクラス1を採用すればよかったのである。クラス1ならば2ドアボディも認められ、排気量も2.5リッター未満なので、エンジンをNA化して100cc減らせばGT−Rも出走可能。しかもウェイトハンデ制があるため、どんな車種が参加しても競争力の均衡はある程度保たれるので、最悪の場合でもGT−Rのボロ負けだけは防ぎ、最低限の面目は保てる。ただクラス1車両の出力レベルでは前輪駆動は難しいかもしれない(註3)ため、ホンダなどの参加は見込みが薄く、GT−Rの対抗車種はトヨタ・マークUシリーズくらいしか無い(註4)可能性が高いのは難点だが。DTMを蹴ったBMWが、1994年のJTCCのようにワークスチームを送り込んで来た可能性も無くはないかもしれない。

 このようにツーリングカーのトップカテゴリーでGT−Rに活躍の場が与えられれば、全日本GTにスカイラインGT-Rを押し付ける必要はなくなる。日産のGTレース車両開発陣も、セダンであるが故の空力上の限界、スカイラインであるが故の直6エンジンの長さ(註5)等々に悩まされる必要はない。スポーツカーのレースなのだから日産はフェアレディZなりを開発すればよいのである。GT−Rの集客力には遠く及ばないのかもしれないが。

 スカイラインGT-Rはツーリングカーレースを勝つために作られた車である。まあ全日本GTの大人気に水を差す必要はないとしても、プロフェッショナルなツーリングカーレースの分野でもGT−Rが活躍できる場を与えられないものか。日本の観客は丁丁発止のバトルだけでは満足せず、贔屓の車種が勝つシーンを見なければ納得できないのである。多分。

 折りしもDTMが復活しようとしている。今度のはABSなどを禁止した安上がりなレギュレーションらしい(註6)。日本もこれに同調すれば、将来再びツーリングカーレースの国際統一に繋がっていく可能性もあるのではなかろうか。

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註1.
 英国ツーリングカー選手権。早くから排気量を2リッターに制限し、ツ−リングカークラス2(後のスーパーツーリング)の原型となった。

註2.
 ドイツツーリングカー選手権。他国に同調せずクラス1を導入したが、参加コストの高騰を招き消滅。国際的に人気が高かったため、DTMと全く同じ顔ぶれによる世界選手権も2シーズンだけ行われた。

註3.
 DTMのアルファロメオ155やオペル・カリブラのように四輪駆動という手も、あるにはある。

註4.
 ツ−リングカークラス1におけるトヨタ・エスティマ(ミドシップのツーリングカー!)の可能性について、筆者は数年前NiftyのFMOTOR4Fで発言したこともある。

註5.
 ツ−リングカーレースでも結局、直6エンジンの長さには悩むことになるかもしれないが。

註6.
 補足(2000/06/18)。新しいDTMは4リッター8気筒まで認められる上、パイプフレーム構造が義務付けられ、しかも四輪駆動は禁止らしいので、同一レギュレーションのレースにスカイラインGT-Rが出走したとしても、やはり“名ばかりのGT−R”にならざるを得ない模様。DTMはDTMで良いのだが、 GT−RのためにはS耐を盛り上げたほうがマシか。

寝言↑
公道天国↑